【感染性胃腸炎とは】種類や感染経路、症状や予防策は?

感染性胃腸炎イメージ

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冬の時期は、乾燥して風邪をひきやすくなるだけでなく、感染性胃腸炎にかかる人も多くなってくるので気をつけたいですね。

感染性胃腸炎とは、病原大腸菌・細菌・ウイルスなどによって引き起こされる胃腸炎の総称です。

主な症状は腹痛や吐き気、下痢などで、病原体によって現れる症状やその強さにも違いがあります。

例年、11月上旬から増加しはじめ、冬から春にかけて流行することが多くなっています。

しかし、感染性胃腸炎は通年でリスクがあるものですので、感染経路を認識し、日ごろから対策しておくことが大切です。

本記事では感染性胃腸炎の種類や症状、感染経路や予防策について解説していきます。

目次

感染性胃腸炎とは?

感染性胃腸炎とは、前述のように食べ物や飲み物などを介して大腸菌・細菌・ウィルスに感染することで引き起こされる胃腸炎のことを言います。

発症すると、主に吐き気・嘔吐・腹痛・下痢・発熱などの症状が現れます。

11月上旬から感染者が増加し始め、冬から春にかけて感染者数が多くなる傾向にあります。

時期によっても感染源となる病原体には違いがみられ、12月のピークはノロウイルス、春のピークはロタウイルスによるものが多く、この時期の感染性胃腸炎はウイルス性によるものが多いとされています。

病原体の種類と症状など

以下の表で感染性胃腸炎を引き起こす病原体の種類と、その感染の原因となる代表的な食べ物、流行時期などを見てみましょう。

病原体 原因となる食べ物 流行時期 潜伏期間
ノロウイルス カキなどの貝類 11月~3月(12~2月がピーク) 1日~2日
ロタウイルス 水や食べ物全般 1月~5月(4~5月がピーク) 1日~3日
カンピロバクター 鶏肉、生レバー(牛)、井戸水(殺菌が不十分なもの) 5月~7月と10月前後(行楽シーズンに多い) 2日~5日
サルモネラ 卵・卵製品、洋菓子類、食肉(加熱が不十分なもの) 6月~9月(7月~9月)がピーク 5時間~72時間(平均12時間)
腸炎ビブリオ 魚介類の刺身、すし 7月~9月(8月がピーク) 10時間~24時間

このように、時期によってかかりやすい病原体は異なり、感染の原因となるものも異なります。

これを見ると、ほぼ通年で何かしらの感染性胃腸炎にかかってしまうリスクがあることがわかります。

また、それぞれ流行期はありますが、流行期でなくても感染するリスクはあるので油断はできません。

上記の表にまとめた以外にも、感染性胃腸炎には病原大腸菌によるものもあります。

病原大腸菌

病原大腸菌は人や動物の腸内や自然環境に広く存在しており、通常は病原性はありません。

しかし、いくつかの大腸菌は人に対しての病原性をもっており、これらを総称して病原大腸菌と呼ばれています。

病原大腸菌は5種類に分類され、症状なども異なります。

病原大腸菌の種類と症状、潜伏期間について以下にまとめます。

種類 概要 症状 潜伏期間
腸管毒素原性大腸菌

(ETEC)
毒素を産生し、コレラ様の激しい下痢を起こします。

毒素は下記の2種類あります。

易熱性毒素(LT):60℃、30分の加熱で失活する

耐熱性毒素(ST):100℃、15分の加熱でも失活しない
腹痛、下痢(主に水様性) 12時間~72時間
腸管侵入性大腸菌

(EIEC)
赤痢菌のように、腸粘膜に侵入して下痢を起こします。

食中毒の他にヒトからヒトへ感染することもあります。
下痢(主に水様性、重症の場合粘液や血液が混じることもある)、腹痛、発熱 1日~5日
腸管病原性大腸菌

(EPEC)
乳幼児の胃腸炎の原因菌として知られていますが、成人でも腸炎を起こすことがあります。 下痢、腹痛 12時間~72時間
腸管出血性大腸菌

(EHEC)
大腸の粘膜内に付着して、増殖する際にベロ毒素(VT)を産生します。

この毒素が腸粘膜の出血や浮腫、壊死等を引き起し腸炎となります。

強い感染力を有し、少量の菌でも感染することがあります。

食中毒の他にヒトからヒトへ感染することもあります。

主な血清型 : O157、O26、O111など。
下痢(血便)、腹痛

※重症の場合溶血性尿毒症症候群(HUS)による腎障害を引き起こし、死亡するケースもあります。
2~8日
腸管凝集接着性大腸菌

(Eaec、EAggEC)
2週間以上続く下痢の原因菌として分離されることが多く、病原因子など不明な点が多い菌です。 持続性の下痢、腹痛 1日~5日

これらの病原大腸菌は主に肉料理(特に牛肉)で生肉や加熱が不十分なものが原因となり、レバ刺しや牛刺し、ユッケなどを食べたことが原因で感染するケースが多くなっています。

また、動物の糞便により汚染された井戸や川の水、同様に汚染された土壌で栽培した野菜などが原因となることもあります。

生肉はおいしいですが、安心安全に食べたい方は肉料理を食べるときには十分に加熱して食べることをおすすめします。

治療法はあるの?

感染性胃腸炎には特別な治療法はありません。

そのため、対症療法がとられます。

症状に応じて整腸剤、制吐剤、抗生物質、解熱剤などを用いて症状を緩和しながら安静にして自然治癒するのを待つのです。

ウイルス性のものであれば、3日~4日程度で回復します。

ですが、乳幼児・高齢者・持病などで抵抗力の衰えている人の場合、下痢などによる脱水症状や体力の消耗によって重篤化するケースや、最悪死に至ることもありますので早めに医療機関を受診するようにしましょう。

特に高齢者の場合は誤嚥(おう吐物が気管に入る)により肺炎に発展することもありますので、体調の変化には十分に注意が必要です。

また、症状が出ている間は乳幼児や高齢者に限らず脱水症状になる恐れがありますので、少しずつでいいので可能な範囲でなるべく多く水分補給するようにしましょう。

水分補給の際は冷えたものよりも、常温のOS-1やポカリスエット、アクエリアスなどミネラルの含まれる飲料をとると良いでしょう。

食事は腹痛がある間はとらない方が望ましいですが、とる際はなるべく消化の良いものをとるようにし、症状が治まってきても回復期の暴飲暴食は避けてください。

感染性胃腸炎の感染経路と予防策は?

ここでは病原性胃腸炎の感染経路と感染を防ぐための予防策を見ていきましょう。

感染経路

感染性胃腸炎の感染経路は病原体が付着した手で口に触れることによって感染する「接触感染」、病原体に汚染された食品を食べることによって感染する「経口感染」が主です。

ノロウイルスなどのウイルスは感染者の嘔吐物が飛散した際などに周囲にいてウイルスの含まれた飛沫を吸い込んでしまうことで感染する「飛沫感染」や、感染者の便や嘔吐物が適切に処理されず、その場に残存したウイルスが乾燥し、付着した埃などとともに空気中を漂っているものをを吸いこんだり、体に付着して最終的に口の中へウイルスが侵入することで感染する「空気感染」でも感染しますので注意が必要です。

予防策

感染性胃腸炎にかかってしまうと前述のように特別な治療法もないため、対症療法で症状を緩和しながら回復を待つしかありません。

薬の力を借りたとしても、嘔吐や下痢の症状がなくなるわけではありませんから辛いでしょうし、二次感染のリスクもあるため基本は仕事や学校にも行けません。

ですから、感染性胃腸炎に限ったことではありませんが、日ごろからしっかりと予防し、かからないようにすることが大切です。

感染性胃腸炎の予防策としては、ロタウイルスであれば予防接種ワクチンがありますので、乳幼児を中心に任意の予防接種が行われています。

ですが、ノロウイルスなどには予防接種はありません。

予防接種以外に有効な予防策は以下の通りです。

  1. 手洗い・うがい
  2. 十分な加熱調理
  3. 便や嘔吐物の適切な処理
  4. 料理場・調理器具・トイレ・共有箇所の消毒・除菌

手洗い・うがい

ほとんどの感染症の予防には、正しく手洗い・うがいをすることが大切です。

外出先からの帰宅時の手洗い・うがいはもちろんのこと、室内でも普段触れるほとんどのものに様々な菌が付着しています。

食事の前やトイレの後、おむつ交換やそのほか汚物処理の後にも手洗いするように心がけましょう。

手洗いの際には石鹸を使い流水で、時計や指輪を外し、指先、爪の間、指の間、手首までしっかり洗うようにしましょう。

手洗いの後はペーパータオルや清潔なタオルでしっかりと拭きとることも大切です。

厚生労働省が食中毒予防のための正しい手洗いの方法を紹介しているのでこちらも参考にしてみてください。

出典: 厚生労働省YouTubeチャンネル

十分な加熱調理

食事をする際は生食を控え、十分に加熱調理していただきましょう。

特に前述にあげたような感染性胃腸炎の原因となる食品はしっかりと加熱調理すると安心です。

便や嘔吐物の適切な処理

おう吐物やふん便を処理する際は、最小限の人数で、マスクや使い捨て手袋、使い捨てエプロンを着用して行いましょう。

汚物中のウイルスが飛び散らないように静かにペーパータオルなどで拭き取り、その後に次亜塩素酸ナトリウム液で消毒します。

拭き取ったペーパータオルや使用した手袋やマスクなどはすぐにはずし、密閉して処分しましょう。

処理後はすぐに石鹸と流水で十分に手を洗ってください。

厚生労働省のノロウイルス予防対策のリーフレットも参考になるので確認してみてください。

出典:ノロウイルス食中毒予防対策リーフレット(厚生労働省)

料理場・調理器具・トイレ・共有箇所の消毒・除菌

調理場や調理器具、共有で使用する箇所(主にドアノブやトイレの便座、洗浄レバーなど)での病原体への接触を防ぐためにも正しい消毒方法で除菌しましょう。

ノロウイルスに対しては、次亜塩素酸ナトリウムによる消毒が有効とされています。

広島県のホームページ(ノロウイルス対策用消毒液の作り方でmノロウイルス対策用の消毒液を作る方法の紹介がされていました。

厚生労働省のホームページのQ&A(ノロウイルスに関するQ&A)でも調理台や調理器具の消毒法として次亜塩素酸ナトリウムや加熱処理を推奨しています。

こういったものを参考にしながら対処してみるのも良いでしょう。

また、厚生労働省のホームページ(新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について(厚生労働省・経済産業省・消費者庁特設ページ))ではコロナウイルスの対策方法としてテーブルやドアノブなどの消毒には次亜塩素酸ナトリウムが有効としています。

まとめ

感染性胃腸炎は病原大腸菌・細菌・ウイルスなどに感染することで引き起こされる胃腸炎であり、主に冬から春にかけて流行を見せます。

しかし、その病原体に感染する原因となる食品の多くは通年を通して食べられているものでもあり、流行期に限らず感染するリスクがあるので注意が必要です。

感染してしまうと、特定の治療法がないため、対症療法で症状を緩和しながら自然治癒を待つしかなく、辛い数日間を過ごすことになってしまいますから、手洗いうがいや十分な加熱調理などを心掛け日ごろからの予防を心掛けておくと良いでしょう。

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この記事を書いた人

コロナ禍の真っただ中で第一子を迎えた事を機に、家族を守っていくためにも感染症や感染症対策についての知識をつけていくことの重要性を痛感しました。
医療従事者の妻から意見を得たり、専門書籍や医療機関の発信情報などを漁り、日々感染症への理解を深めています!

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